今さら聞けないインターネットの仕組み~基礎から理解するネットワークの世界~【前編】

目次
1 はじめに
2 インターネットとは何か?
・2-1 インターネットの特徴
3 昔のネットワークと何が違う?
4 インターネットの役割は「便利な通信」から「社会の基盤」へ
5 接続の仕組み:ISPってなに?
・5-1 ISPの役割とは?
・5-2 ISP同士つながって、何をしている?
以降は後編
6 通信の基本:TCP/IPとOSIモデル
7 OSI参照モデルとは?
8 IPアドレスとDNS:住所と名前の仕組み
・8-1 IPアドレスとは?
・8-2 IPv4とIPv6の違い
・8-3 DNSとは
9 ネットワーク設計の基本:アドレスとサブネットマスク
・9-1 サブネットマスクの仕組み
・9-2 ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス
10 まとめ
インターネットの仕組みをわかりやすく解説する本記事は、前後編の2部構成で作成しています。
前編では、「インターネットとは何か?」という基礎的な概念から、実際に私たちがネットに接続する仕組み(ISP)までを解説します。(1章~5章)
後編では、通信の具体的な技術(TCP/IP、OSIモデル、IPアドレスなど)について
さらに詳しくご紹介しますので、是非あわせてご覧ください。(6章~10章)
1 はじめに
私たちは日々、SNSや動画視聴、キャッシュレス決済など、あらゆる場面でインターネットを使っています。でも「それってどうしてつながるの?」と聞かれて答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は「インターネットの基本構造と通信の仕組み」をわかりやすく解説します。
「なんとなく使っている」から一歩進んで、「ちゃんと理解して使う」インターネットへ。
そんなきっかけになれば幸いです。
2 インターネットとは何か?

インターネットは、世界中のコンピュータ同士が相互に接続された巨大な通信ネットワークです。SNS、動画、メール、オンラインショッピング…。誰もが手持ちのスマホやパソコンから利用できるということは、すべてがこのネットワークを介してつながっているということです。
2-1 インターネットの特徴
- 誰でも接続できる(特別な資格は不要)
- 中央の管理者がいない(世界中の誰もが対等に参加)
- 共通の通信ルール(TCP/IP)を使う
- リアルタイム通信が可能
つまり、インターネットとは「世界規模で自由に接続された情報ネットワークの集合体」といえます。
3 昔のネットワークと何が違う?
かつての通信ネットワーク(電話網や専用線)は、限られた人だけが使える、特定のアプリに閉じ込められたものでした。それに対してインターネットは、誰もが参加できる世界規模で開かれた情報通信インフラです。
かつては大学や研究機関専用だったコンピュータネットワークが、今ではスマホだけでも様々な情報サービスを享受できます。これがどれだけ革命的なことか、想像してみてください。
4 インターネットの役割は「便利な通信」から「社会の基盤」へ

インターネットは単なる通信手段にとどまりません。
- キャッシュレス決済(PayPayなどのQRコード決済、SuicaなどのICカード決済など)
- 動画・音楽ストリーミング(YouTube、TikTok、Spotifyなど)
- コミュニケーションツール、SNS(LINE、Facebook、X(旧Twitter)など)
- ビジネスでのクラウド管理(AWS、Azure、Google Workspace、Slackなど)
これらのサービスは、「常にインターネットがつながっていること」が前提で成り立っています。もはやインターネットは、電気やガス・水道のような社会インフラなのです。
5 接続の仕組み:ISPってなに?

インターネットにアクセスするには、物理的な回線(アクセス回線)と、それを通してネットワークに接続してくれるISP(インターネットサービスプロバイダー)の存在が欠かせません。ISP自体がインターネットの一部といってよいのです。
5-1 ISPの役割とは?
ISPは、利用者とインターネット世界をつなぐ「入口ゲート」のような存在です。たとえば、以下のような業務を担っています。
- 利用者がインターネット通信を可能にする仕組みを提供(IPアドレスの割り当て・付与、データパケットの中継・伝送、経路情報の取得・広告、DNSサービスなど)
- インタネットアクセス回線の提供(ブロードバンド(光)回線、専用線、無線通信回線など)
- 関連付加価値サービスの提供(メールサービス、ルータ、ファイアウォールなどの機器レンタル/管理サービス、VPNサービスなど)
- セキュリティ関連サービスの提供(URLフィルタリング、ウイルス検知、DDoS対策など)
有名なISPには、NTTドコモビジネス(OCN)やソフトバンク、KDDIなどがあります。
5-2 ISP同士つながって、何をしている?
ISPは、もっぱら自らもインターネットの一部と認知されるべく自律したネットワークを構築・運用しています。このネットワークをAS(Autonomous System/自律システム)と呼びます。インターネットの通信においては、たとえ通信相手が同じ日本国内に限ったとしても(実際は、日本国内にあるとは限りませんが…)自社のASネットワーク内だけの通信で目的地(通信相手)に到達しうるとは限りません。むしろ、一つのASの中で通信が完結するケースは少なく、複数のASのネットワークを跨いでの通信になることも決して少なくはないのです。
そこで、世界中にはりめぐらされたインターネット上に存在する、しかし利用者にとっては、どのASにつながっているかわからない相手と通信できるようにするためには、目的地(通信相手)まで到達できる経路、特に最適な経路をISPは把握することが重要になってきます。ISPが経路情報を取得し、自らの経路情報を広報するための接続形態として出てくるのが次の2つの形態です。
※ISPは、ルータのルーティングテーブルに基づいて、データであるパケットを中継しますが、経路情報とは、ネットワーク上でデータパケットが目的地まで到達するための通り道(経路)を決定するために必要な情報です。つまり、経路情報はルータのルーティングテーブルを生成するための情報ということです。

ピアリング(Peering)
それぞれASを運用するISP同士が、お互いのネットワーク情報を交換する目的で、当事者同士の合意によりお互い対等な立場で相互接続することです。通信経路の最適化やコスト削減が図れる効果があり、当事者間を直接回線やケーブルで接続する方法のほか、IX(インターネットエクスチェンジ)という場所に回線を引き込んで、他のISPとそれぞれ当事者同士で交渉をして、相互接続を実現させたりしています。
トランジット(Transit)
ASを運用するネットワーク間での接続形態をいいます。手っ取り早くフルの経路情報を取得できる接続形態です。海外の経路情報やピアリングが成立していないネットワークの経路情報をトランジットサービスを契約することにより、取得することができます。
一般的には国際ISPや大手ISPのトランジットサービスとして有償で提供されています。提供を受ける利用者側のISPは、ピアリングとトランジットをうまく使い分けて冗長性を高めたり、費用面において効率的な使い分けをしたりしているのがもっぱらではないでしょうか。