運用監視の現場 ~静かに熱い、運用監視の日々~

目次
1. はじめに
2. 運用監視サービスの目的と役割
3. アラート対応
3-1. 主な監視対象と項目
3-2. アラート対応の基本ステップ
4. 定常業務
4-1. Windowsアップデート
4-2. サービス確認
4-3. 目視確認
5. 運用監視に求められるスキル
6. おわりに
1. はじめに
こんにちは、HKです。運用監視の現場に配属され早くも3年が経ちました。今回は、私が日々向き合っている「運用監視」という仕事について話したいと思います。
運用監視とは、システムやサービスが安定して稼働し続けるように、常にその状態を見守る仕事です。システムは常に止まらない。だから監視も止まれない。24時間365日体制で、どんなトラブルにも即対応できるように備えています。
このブログでは、運用監視の基本から、サービスを守るためにどのような運用監視を行っているのか紹介していきます。これから運用監視に関わる方や、興味のある方の参考になればと思います。
2. 運用監視サービスの目的と役割

運用監視って、何のためにやっているの?と聞かれることがあります。一言で言えば、「システムを安定して動かし続けるため、障害発生時に迅速に復旧させるため」です。
まず、一番の目的は、システムの安定稼働を維持すること。サーバやネットワーク、アプリケーションなどがちゃんと動いているかを常に見守ることで、サービスが止まらないようにしています。
そして、もう一つ大事なのが、異常の早期発見と迅速な対応を行うことです。「何かおかしいかも?」という兆候をいち早く察知して、トラブルになる前に手を打つ。これができるかどうかで、障害の影響が大きく変わってきます。
さらに、監視を通じてパフォーマンスの最適化やセキュリティ強化にも貢献しています。リソースの使われ方を見て負荷分散のヒントを得たり、不正アクセスの兆候を見逃さないことも。日々の監視データは定期メンテナンス計画に役立ちます。
また、障害が起きた時の初動対応を担い、必要時に応じて保守会社や構築チームへつなぐ橋渡しもします。監視ツールを使ってリアルタイムで状況を把握し、どんなアクションが必要かを判断するのも大事な役割です。
3. アラート対応
アラート対応は、運用監視の中でも特に緊張感のある業務です。システムの異常を知らせる「警報」に対して、どう動くかが問われます。このアラートは、サーバのCPU使用率が異常に高いとか、ネットワークが切断されたとか、何かしらの異常の兆候を知らせてくれるものです。慌てずに冷静に対応を進めていきます。
3-1. 主な監視対象と項目
まずは、運用監視で「どんな監視をしているのか」ほんの一部をご紹介します。
監視項目は、対象となる機器やサービスによってさまざまです。CPUやメモリの使用率、ネットワークの状態、アプリケーションの状況など、それぞれに適した監視が必要です。
運用監視の目的は、システムの安定稼働を守ること。そのためには、どの項目を監視すべきかを見極める力や、アラートを発報する閾値の設計などが重要になります。こうした業務を通じて、現場でしか得られない実践的なスキルが自然と身についていきます。
【 サーバ機器 】
| 死活監視 | サーバが稼働しているかを確認する基本的な監視 |
| リソース監視 | サーバの負荷状況やリソース使用量を監視、パフォーマンス低下を防ぐ |
| プロセス監視 | サーバ上で動作しているやサービスのプロセスが正常かを監視 |
| ログ監視 | システムログやアプリケーションログをチェックし、異常を検知 |
| サービス監視 | HTTP,DNS,FTPなどのサービスが正常に応答しているか監視 |
【 ネットワーク機器 】
| 死活監視 | ルータやスイッチが正常に稼働しているかチェック |
| 経路・遅延監視 | トラフィック量や帯域幅を監視し通信遅延を防ぐ |
| 状態監視 | 機器の状態(CPU,メモリ使用率、温度など)を監視する |
【 セキュリティ 】
| ログイン試行 | 不正アクセスの兆候を検知 |
| ログ監視 | ファイアウォール、IDS/IPS、サーバなどのログを収集・分析 |

3-2. アラート対応の基本ステップ
アラート対応は、どのようなステップで実施するか紹介していきます。
① アラート内容の確認
メッセージを確認し、どの機器で、どんな異常が、いつ発生したのか把握するのが第一歩です。
② 初動対応(切り分け)
アラートが発生した際、弊社では、そんな時にも迷わずに動けるよう、アラート対応の詳細な資料を整備しています。一見同じように見えるアラートでも、対象となる機器やサービスによって重要度が全く違います。
だからこそ、まずは冷静に「切り分け」を行い、状況を把握することが大切です。重要度に応じて対応方法を柔軟に切り替えることで、復旧のスピードも上がり、影響も最小に抑えられます。
さらに、複数のアラートが同時に発生することもあります。
そんな時は、優先度を判断し、まずは重要なものから対応するのが鉄則です。
③ 一次対応
切り分けの結果、原因がある程度特定できたら、次は一次対応です。ここでは、事前に決められた対応手順に従って再起動や設定変更を実施します。もし影響が大きそうな場合は、アクセス遮断やバックアップ取得といった、より慎重な対応を行うこともあります。
こうした対応が、その後の復旧や再発防止につながっていきます。
④ エスカレーション
運用監視チームで対応が難しいケースや、影響範囲が広がっている場合には、構築チームへのエスカレーションが必要になります。その際に大切なのは、状況を正確に、そして簡潔に伝えること。
例えばこんな感じで連携しています。
「○○サーバで△△アラートを検知しました。状況を確認したところ××の状態で、○○が原因と考えられます。△△の対応を実施でよいでしょうか。」
このように、検知した内容・現在の状況・考えられる原因・提案する対状況と原因、提案する改善策を伝えることで、構築チームもすぐに動きやすくなり、復旧までの時間を短縮できます。
⑤ アラート履歴の記録
アラート対応がひと段落したら、最後に忘れてはいけないのが対応記録の作成です。発生日時・アラートの内容・対応方法、そして結果までを残しておくことで、次回同じような事象が起きた時に、すばやく動けるようになります。この記録は、チーム内での情報共有にも大きな役割を果たしていて、「あの時どう対応したか?」という疑問もすぐに解決できます。
アラート対応は、ただの「通知処理」ではなく、そこには、システムを守るための判断力と行動力を求められます。最初は戸惑うこともありますが、経験を積むごとに、冷静に動けるようになり、対応の質も自然と上がっていくことを実感しています。
4. 定常業務

運用監視は、アラート対応だけではなく、日々の定常業務も重要です。
これもシステムの安定稼働を支えています。ここでは、代表的な定常業務を紹介します。
4-1. Windowsアップデート
企業が業務を行うために整備したITや情報システムの運用環境では、セキュリティ対策や安定稼働のために、更新プログラムの管理が欠かせない業務の一つになります。ただ、「自動でアップデートされるからOK」という訳ではありません。更新によっては業務システムに影響がでる可能性もあります。
そのため、事前の検証やタイミングの調整が必要です。時には、業務時間外に手動で適用するケースもあります。自動化せずに、影響の少ない時間帯に実施することでトラブル回避にもなります。
弊社では、24時間365日体制の有人監視サービスを提供しているため、企業のニーズにあった対応を行っています。
4-2. サービス確認
「毎日10時からサービスが開始するけど、不具合なく動作するか心配」そんな不安はありませんか?
運用監視は、サービスが正常に動作しているか定期的にチェックも行っています。事前に確認することで、安心してサービスを提供できる環境を整えています。
また、定時に実行されるバッチ処理やジョブの確認も大切な定常業務の一つです。処理が正常に終わっているか、ログなどを見ながらエラーの有無をチェックします。もし不具合が発生していたら、再実行やエスカレーションも含めて対応します。
こうした確認作業もシステム全体の安定を支えています。
4-3. 目視確認
ツールによる監視だけではなく、人の目で直接確認する「目視確認」も欠かせない業務の一つです。とくにオンプレミス環境では、データセンターやサーバールームに足を運んで、機器の状態を定期的にチェックしています。この「現場に行く」という行動が、思わぬトラブルの芽を見つけるきっかけになることもあります。
サーバのランプ状態が正常なら緑、異常なら赤やオレンジに点灯、ログが溜まっているだけでも警告ランプが点くこともあります。スイッチのポートランプを確認し、通信が正常に行われているか確認もします。
また、ファンの異常音や機器の過剰な熱などもトラブルの前兆です。
目視確認のように五感を使った対応も有人による運用監視の強みです。
5. 運用監視に求められるスキル
運用監視の現場では、報連相スキル(状況を正確に伝え、必要な判断を仰ぐ力)、や電話・メール対応力(障害発生時の連絡・報告を落ち着いて対応する力)などコミュニケーション力が最も重要です。
もちろん、素早く対応するためのタッチタイピング、コマンド操作の基本、エラーメッセージやシステムログから異常の兆候を読み取る力、幅広い環境を理解するIT知識、決められたフローに忠実に行動する対応力なども求められます。
技術力だけでなく、コミュニケーションを含めた幅広いスキルを求められるのが運用監視の特徴です。
監視ツールの使用経験があると即戦力の可能性もあります。
6. おわりに
運用監視は、24時間365日体制です。夜勤や休日対応もあるため、生活リズムも崩れがちで、体力的も精神的にもハードな一面があります。アラートが鳴れば、即座に状況判断が求められ、常に緊張感のある現場です。自分の判断だけでは動けない場面も多く、マニュアルに沿った対応が基本となります。でも、状況よっては柔軟な判断が必要になる事もあり、そこが難しくもあり、面白いところでもあります。
障害を未然に防げた時。トラブルを素早く復旧できた時。そんな瞬間に「ユーザの安心と業務の継続を守った」と実感できます。経験を積むことで、冷静な判断力や分析力も身に付き、対応の質が上がっていくのがわかります。それが自分の成長を感じられる瞬間でもあります。さらに、運用監視は一人ではできない仕事です。チームで連携しながら、他チームと協力して、みんなでシステムを守っていく、その一体感こそが、この仕事のやりがいと感じています。
運用監視は、IT業界の土台を支える仕事です。だからこそ、この業務で得たスキルと経験はどんなITキャリアにもつながっていきます。これからも運用監視を通してエンジニアの道を精進していきたい。
そんな思いを胸に、今日もシステムを守り続けます。
